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八戒は口に含んでいた酒を噴き出しそうになったが、かろうじてこらえた。 が、向かいの悟空が盛大に噴き出した。 「おい悟空、お前ぇ!」 「わ、悪りい八戒!」 慌てて手拭いを出そうとするが、鉄扇が先に八戒に手拭いを差し出していた。 自分は慣れた様子で手早く卓を拭きながら、愉快そうにくすくす笑う。 「ふふ、思った以上のいい反応だわぁ。すぐバラさないでよかった〜」 三蔵はその横顔をまじまじ見つめながら、声をひそめた。 「あの…紅孩児さんのお母上という事は、つまり貴方は…」 「はいそこまで。その先は言わないでおいて」 鉄扇は笑みをたたえた唇の前に、人差し指を立てる。 『妖怪』と言おうとしていた三蔵は、慌てて口をふさいだ。 紅孩児・黒孩児兄弟に会った時、1人紅孩児にさらわれた三蔵は、複雑な親子関係について多少聞いている。 紅孩児は本妻の子で、黒孩児は妾の子。 確か、黒孩児の母は人間だと言っていた。 という事は、本妻である鉄扇は人間ではないと考えるのが妥当だろう。 そして、鉄扇の反応を見る限り、その考えは当たっていたようだ。 「ごめんね、周り皆酔っ払いだから聞いちゃいないと思うけど一応ね」 「す、すみません。軽率でした」 「いいえ〜。…悪いけど、お店終わるまで待っててくれる?貴方達、宿もないでしょ。話も色々聞きたいし、ウチに泊まって」 「そんな、そこまでご厄介にはなれません!」 三蔵は胸の前でぶんぶんと両手を振ったが、鉄扇に笑い飛ばされてしまった。 「何言ってるの。人の好意は素直に受け取んなさいな」 「いえ、でも…女性お1人で暮らしている所へ、男ばかり5人もお邪魔する訳にはいきませんよ」 三蔵の言葉に鉄扇はくすくす笑う。 「ホント、生真面目ねえ。紅に聞いてた通りだわ」 一体どんな話をしたのだ、紅孩児は。 三蔵がちょっと憮然とした顔をすると、鉄扇はまた笑った。 「大丈夫よ。今ちょうど、紅が来てるの。女1人じゃないから来なさい」 結局三蔵は押し切られたが、八戒にとってもそれは好都合だった。 (紅孩児の母親って事は、牛魔王の妻って事だよな) 天界で、金蝉に聞いた話を思い出す。 悟空がまだ『美猴王』と名乗っていた頃、間諜として水簾洞に潜入し悟空を裏切った、元・牛金星官。 金蝉は、牛魔王に会えば八戒が知りたい事のほとんどが分かると言っていた。 ようやく、牛魔王へ繋がる糸を見つけたような気分だった。 本日はここまで。 続きは次回の講釈で。 |
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