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誰一人、三蔵の行動が理解できなかった。 この後起こる事を目の当たりにするまでは。 三蔵が投げた袋は、本堂の外へ転がり出た。 呆然としてしまっていた黄眉が我に帰り、ぎっと三蔵を睨みつける。 「折角僕の間合いに入っておいて、何故殺さない?お前、千載一遇のチャンスをドブに捨てたよッ!」 細く綺麗な指先にじゃきんと長い爪を伸ばして、黄眉はその爪を三蔵に向けて突き出す。 その時、本堂の外で突然空気が爆ぜた。 どぉん、と落雷のような轟音が鳴り響き、爆風が本堂の中にまで吹き込んでくる。 「な、何だあ?!」 八戒が咄嗟に入口に立ちふさがり全員を背に守ったので、刺青の力で誰にもケガはなかった。 「さっきの襟飾りが爆発したんだ。どうやら何かの術がかかってたみたいだな。かけたのは多分…」 「牛魔王。…だな?」 黄風の確信をこめた言葉に、三蔵は頷いた。 「嘘だ…そんな、牛魔王様が僕に…」 「いい加減現実を見るのだ。牛魔王はお前の事など何とも思ってない…というか、誰の事も何とも思ってないのだ」 「黄風、お前よく分かってるな」 悟空がうんうんと頷きながらそう呟いた。 三蔵は剣を鞘に戻し、八戒の横をすりぬけて本堂の外へ出た。 綺麗にならしてあった地面が、円く陥没している。 続いて外に出てきた他の者達も、境内の惨状を見て目を瞠った。 「これは…。もし黄眉が持ったまま爆発してたら、本堂ごと全員吹き飛んでいたっすよ…」 悟浄が深刻な声で呟くと、玉龍がてててっと駆け出して、陥没した地面の中央にしゃがみ込む。 「心経のカケラあったよ!爆発でも何ともない、すごーい」 三蔵の所まで駆け戻った玉龍は紙片を手渡す。 「はい、三蔵」 三蔵はしゃがんで玉龍と視線を合わせ、ニッコリ笑った。 「…これはあの黄眉ってやつに返してやれよ」 「え?…いらないのか?」 「いらないよ、んな紙切れ。大体、泣いてるガキから何か取り上げたりなんてできないって」 三蔵の視線につられて一行は黄眉を窺う。 黄眉はボロボロと涙をこぼして大泣きしていた。 「う…わあああん!牛魔王様に見捨てられちゃった…わあああん!」 さっきまでの虚勢はどこへやら、小さな子供のように声をあげて泣く黄風に、三蔵はスタスタと近寄った。 「ほらほら泣くなって」 ポンポンと頭を撫でて、三蔵はニッと笑う。 「見捨てられたんじゃない。お前の方から見捨ててやったんだよ。そういう事にしちゃえ、なっ」 本日はここまで。 続きは次回の講釈で。 |
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