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涙にむせぶ黄眉以外の全員が、三蔵に違和感を抱いていた。 「なあ…師匠ヘンじゃないか?」 「はいっす。何か、悟空兄貴みたいになってるっす」 「え、俺?」 「ん。あの『ニッ』て笑顔、ちょっと似てる」 こそこそと小声でやりとりする弟子達には気付かず、三蔵は黄眉を元気づけようと頑張っていた。 「ほらっ、高い高ーい☆」 三蔵は黄眉を頭上高く抱き上げ、そのまま肩車に担ぐ。 「泣き止んだら今度、俺の馬に乗せてやる。カッコいいんだぞ〜、連銭葦毛の名馬だぞ」 そのセリフを聞いて、悟空がヒュッと息を呑んだ。目をいっぱいに見開き、唇を震わせる。 「連銭葦毛…?!」 「どうした悟空?」 八戒の心配そうな声も、耳に入らなかった。 以前、三蔵の昔からの知り合いである紹絹が、三蔵は村の襲撃より前の記憶を失っていると断じた。 その証拠となったのは、三蔵がとても大事にしていた自分の馬を『青毛』と間違えた事だ。 その後、三蔵が村の襲撃の時に死んだ少年・陳緯の身体に、漢の王族の少年・劉伯欽の魂を宿して生きているのだと判明したが、馬については訂正していない。 三蔵は、陳緯の愛馬が連銭葦毛だった事を知らないはずだった。 …つまり。 何故記憶が甦ったのかは不明だが、今の三蔵は三蔵ではなく…陳緯なのだ。 悟空が動けずにいる間に、黄眉がようやく泣き止んだ。まだ時折しゃくり上げてはいるが、涙は止まっている。 三蔵は黄眉を肩から下ろし、くしゃくしゃと砂色の頭を撫でた。 「よーしイイ子だっ!もう変なヤツに騙されんなよ。黄風だっけ、お前ちゃんと守ってやれよな。お兄ちゃんだろ?」 「我らは兄弟じゃないが…でもまあ引き受けたのだ」 黄眉が驚いて黄風を振り返る。 黄風は様子のおかしい三蔵を横目で見ながら、平坦な口調で言った。 「仲間を失って脱け殻のようになっていた我を、牛魔王に紹介してくれたのはコイツなのだ。牛魔王は好きじゃないがコイツには恩がある。我は借りはきちんと返す男なのだ」 黄風は黄眉に手を差し出す。 「我より牛魔王がいいなら仕方ないが…でも我は、死んだ仲間達に誓って絶対にお前には嘘をつかぬ。守れなかった仲間達の分まで、お前を守るのだ」 黄眉はまたじわっと瞳を潤ませたが、その手をとるべきか迷うように、右手を宙にさ迷わせていた。 すると三蔵がその手をガシッと掴み、黄風の手と無理矢理繋げた。 「じゃあお前ら今から義兄弟な。仲良くやれよ!」 本日はここまで。 続きは次回の講釈で。 |
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