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zoom RSS 鵺栖町あやかし譚362

<<   作成日時 : 2012/03/27 21:36   >>

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「待て!」
突然響いた声に、あやかしと社の父とが足を止める。
一瞬間が空いて、あやかしだけが振り返った。

息を荒げた社が、幻の隣に立っていた。
「また来たのか、シロ」
「幻を迎えに来たんだよ…」
そう言いつつ、社の目はあやかしとその隣の後ろ姿に注がれる。

「…行くのか」
「ああ。こいつを送っていかないと。方向音痴でな」
隣で硬直している背中を、あやかしはぽんと叩く。
「……」
社は闇に目を凝らす。見覚えのある後ろ姿。
口を開いた瞬間に、その姿は消え、アゲハ蝶がひらりと舞う。
肩にとまった蝶にあやかしは微かに苦笑して、社に手を振った。

社は手の中にあったものを、あやかしに向けて投げる。
ぱしんと片手で受け止め、手の平を開くと、5円玉が載っていた。
「ご縁がありますように、だってさ」
苦笑混じりの微笑。
社のその表情にあやかしは一瞬目を丸くしてから、愛おしげに眇めた。
衣を翻して踵を返し、闇に溶けるように消えていった。

「行っちゃったね」
「うん」
「本当は、一緒に行きたかった?」
幻の問いかけに、社は真稚を抱き上げながらいつも通りの微苦笑を返す。
「いや…俺はまだ当分、こっち側にいるよ」

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