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zoom RSS 39歳バツイチ男性が大冒険して 道中特にモテたりせずに大魔王を倒して世界が平和になるファンタジー・8

<<   作成日時 : 2014/12/28 03:14   >>

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魔王が住む山は、それに相応しい険しい山だった。
ただし、魔王がくれた手書きの地図があればそれほどでもなかった。
少し回り道だなと思った部分は、崖や通りづらい道を迂回したものであって、地図を信じて進んだら罠が!というようなこともない。
なんだこれは。こんなに楽でいいのか。勇者ってもっと大冒険しなくていいのか。

時々化け物が出たが、少し威嚇するだけで逃げていった。
見た目はだいぶ浮世離れしているが、中身は元の動物の性質を残したままのようだ。
それでも元から獰猛なのか向かってくる化け物は、王女の『コップ一杯の美味しい水を出せる能力』で水を浴びせて怯んだところを、僕と大臣ジュニアで切り倒す戦法で進んでいた。
王女の魔法は、思っていたよりずっと役に立った。ただし、一度出したら10分待たないと次が出せないらしいが。

「勇者先輩、大丈夫っすか」
「うん…うーん、少し休んでいいかな…」
ここまでの道程は王女のペースに合わせてきたけれど、ここにきて僕が二人の足を引っ張っていた。
若さ…だろうか…。
「さすがにこの化け物だらけの山で野宿はできないし、今日中に魔王のところへ着かないと…」
「大丈夫っすよ〜。この地図パネェ親切だし、化け物もそんな強くないし。このペースならたどりつくっしょ!」
大臣ジュニアの楽天的意見が今はありがたかった。
王女は魔法で出した水を差し出してくれる。なるほど美味しい。
休憩の間に、あの絵本を開いた。
王女の新しい解釈を聞いてから、何度か読み直している。
そう言われると確かに、魔物は勇者を魔王のところへ導いているように読めたし、勇者は国へ戻ったという記述はない。
魔王の手先である魔物が、魔王の敵である勇者を魔王のところへ案内する。
それは魔物の裏切りなのか。それとも魔王自身が勇者を呼んだのか。
勇者が国へ戻らなかったのは死んでしまったからか、それとも魔王を倒した後そこを離れられない理由でもあったのか。
疑問は尽きないが、結局全て想像でしかない。
…魔王に会えば、この謎も晴れるだろうか。
僕は溜息をついて手紙をしまう。
「行こうか」
声をかけ立ち上がり進むと、二人が後からついてくる気配がした。
やがて岐路に差し掛かり、大臣ジュニアに預けてある地図を確認しようと振り返った僕は、硬直した。
二人の後ろに、小山のような巨大な化け物が口を開けて立っていた。
「危な、…っ!?」
振り向いたままの不安定な体勢で剣を抜こうとして、さらに体勢を崩す。
ずる、と足が滑った。
「勇者先輩!?」
彼らが視界から消える。違う、消えたのは僕の方だ。

足を滑らせた先は、崖だった。

声にならない悲鳴をあげながら、僕はそのまま十数メートルほどを滑落した。

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